不動産会社の取引の仕組みって、複雑に感じませんか?
私の経験上、賃貸の取引に限って言えば、不動産会社の仕組みを理解していない、借主様が多い印象を受けます。
私が重要事項説明で「取引態様」を説明する際、賃貸不動産の取引相手(契約相手)が不動産会社だと、勘違いしているお客様がいます。
賃貸借契約の契約主体は「貸主」と「借主」です。
「不動産会社」と「借主」との間の契約ではありません。
「不動産会社」は「貸主」と「借主」の間に入って、交渉や契約を行う仕事をしています。
(※貸主が不動産会社の場合もあるため、契約によっては不動産会社と借主の契約となることもあります。)
このような勘違いは、不動産会社の媒介(仲介)取引の仕組みが、複雑だからと考えています。
一般の方が不動産会社と取引をするのは、人生で数える程度です。
不動産会社の取引の全容を理解するには至らないのかもしれません。
そこで、今回は不動産会社の取引である、媒介(仲介)の仕事をわかってもらいたく、「不動産会社における媒介(仲介)取引の仕組み」を説明します。
不動産取引のほとんどは媒介(仲介)取引
不動産会社は、「売主と買主」「貸主と借主」の間で交渉・契約を行う「媒介(仲介)」という取引をしています。
不動産の「売買取引」と「賃貸取引」のほとんどが「媒介(仲介)」です。
(※その他に「自ら売主」「代理」といった取引もあります。)
今回は「媒介(仲介)取引」を中心に、不動産会社の取引の仕組みを説明します。
まずは下の図を見てください。
[赤丸]は[売主](又は[貸主])を、[青丸]は[買主](又は[借主])を、[黒四角]は[不動産会社]を表しています。
不動産会社は下の流れで取引を行っています。1つ1つ説明したいと思います。
(以下は売買を想定して説明していますが、売主を貸主、買主を借主と読み変えても同じと仕組みとなっています。)
- 取引1:売主様と不動産会社の媒介契約
- 取引2:不動産会社Aから不動産会社B~Nへ買主様の紹介依頼
- 取引3:買主様が不動産会社Aと取引するパターン(両手仲介)
- 取引4:買主様が不動産会社Cと取引するパターン(片手仲介)

取引1:売主様と不動産会社の媒介契約
不動産の売却を考えている売主様は、不動産会社と「媒介契約」を交わします。
「媒介契約」には種類があり、下の3つがあります。
- 専属専任媒介契約
- 専任媒介契約
- 一般媒介契約
各々の契約にはメリット・デメリットがありますが、売主様と不動産会社の間では「専任媒介契約」を結ぶのが一般的です。
この媒介契約では、主に下の内容を決めます。
- 媒介契約の期間
- 報酬金額
- 活動内容の報告頻度
- 売主様が買主様を見つけたときの対応
”売主様と媒介契約を締結した”不動産会社Aは、売主様と買主様または仲介会社(B~N)との間で、交渉を行う役割をもちます。
取引2:不動産会社Aから不動産会社B~Nへ買主様の紹介依頼
不動産会社Aは、買主様を探すために募集広告をだします。
募集広告の種類は多岐にわたりますが、メインは「不動産ポータルサイトへの掲載」と「現地看板の設置」です。
そして、グループ会社や売却不動産のある地域の不動産会社に、買主様の紹介依頼を行います。
このとき、”売主様と媒介契約を締結していない”不動産会社B~Nは「仲介会社」という立場になります。
不動産会社B~Nは買主様を見つけると、不動産会社Aと買主様との間で、交渉する役割をもちます。
取引3:買主様が不動産会社Aと取引するパターン(両手仲介)
買主様が仲介会社B~Nではなく、売主様と媒介契約を締結している不動産会社Aへ、不動産の買付の意志を示すパターンです。
買付の意志を示すとは、具体的には「売主様に買付証明書を提出する」ことをいいます。
不動産会社Aは、売却不動産の売買契約から引き渡しまで、すべての段取りを行います。
報酬の「両手」とは
このパターンの場合、不動産会社Aは不動産の引き渡し後に、「売主様からの報酬」と「買主様からの報酬」を受け取ります。
不動産会社Aは「売主様」「買主様」の両方から報酬をいただくため、業界では「両手」といいます。
取引4:買主様が不動産会社Cと取引するパターン(片手仲介)
買主様が仲介会社Cへ、不動産の購入の意志を示すパターンです。
買付の意志を示すのは「取引3」と同じです。
買主様の買付証明書の提出先は不動産会社Cとなりますが、不動産会社Cは不動産会社Aへ提出します。
不動産会社Cは、売買契約や住宅ローンの承認スケジュール確認、決済場所の確保など、不動産会社Aと相談しながら、不動産の引き渡しまでの段取りを行います。
報酬の「片手」とは
このパターンの場合、不動産会社Aは「売主様からの報酬」、不動産会社Cは「買主様からの報酬」を受けとります。
不動産会社は直接担当するお客様からのみ、報酬をいただくため、業界では「片手」といいます。
取引態様でわかる! 不動産会社Aと不動産会社C
不動産会社の取引の仕組みは、おおまかには上の通りです。
では、買主様(または借主様)は「不動産会社A」と「不動産会社B~N」を見分けることができるのでしょうか?
結論としては見分けることができます。
では、どこをみたらいいのでしょうか?
それは「取引態様」という欄です。不動産広告には「取引態様」が必ず記載されています。
「取引態様」とは買主様(または借主様)からみて、相手がどのような立場で取引しているかを示しています。
上の例でいうと、不動産会社Aの取引態様は「専属専任」または「専任」となっており、不動産会社B~Nの取引態様は「媒介(仲介)」となっています。
取引態様には、そのほかにも「一般」「代理」「売主(賃貸の場合は貸主)」などがあります。
まとめ
買主様や借主様が不動産ポータルサイトを見て、同じ物件ばかりが載っていることに、疑問を持ったことはないでしょうか?
ここまで読んでいただけたらわかると思いますが、不動産会社のそれぞれの立場で募集広告を出しています。
その立場は下の通りです。
- 専属専任
- 専任
- 媒介(仲介)
- 代理
- 一般
- 売主(または貸主)
今回の説明では、一般的な取引である「専属専任」「専任」「媒介(仲介)」を主に取り上げました。
各々の立場で多くの不動産会社が取引を行っているため、買主様や借主様の視点では、取引が複雑に見えると思います。
今回の説明で、少しでも不動産会社の取引の仕組みが理解してもらえたら幸いです。
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